この文章は現在生産緑地を所有されている方々へ向けたものです。特定生産緑地制度について、再度おさらいしてみようとの目的のものです。地価が上がるとか下がるとか不動産市況について予想を述べたものではありません。
さて、現在三大都市圏の市街化区域内農地の約5割を生産緑地が占めています。2019年の統計では12,209haです。広さがピントきませんねエ。1haは10,000㎡。ナゴヤドームのフィールド面積は13,200㎡=1.32ha。三大都市圏の生産緑地の面積はナゴヤドーム約9,250個分となります。広さのイメージはできましたか。東京ドームでなくてナゴヤドーム? はい、愛知県長久手市から情報発信しておりますので、ナゴヤドームで表現してみました。
2022年には、生産緑地地区のうち面積ベースで概ね8割に当たる生産緑地が、生産緑地指定から30年が経過します。いわゆる2022年問題と言われる所以です。
30年が経過したらどうなるの? 第一段階として取るべき行動は2つあります。
- 「特定生産緑地」指定を受ける。この場合の選択肢は概ね5つあります。
- 「特定生産緑地」指定を受けない。この場合の選択肢は概ね2つあります。
若干ですが詳しくみていきましょう。
1.「特定生産緑地」の指定を受け、今まで通り固定資産税等や相続税につき優遇措置を受ける。ただし営農は継続する。以後10年毎に判断する。この場合第2段階目として次の5つの振る舞い方があるようです。
① 自作。自分で農業をやる。自分や家族を農業従事者として指定して農地運営を継続する。
② これ以降は多作の話です。市や社会福祉法人に福祉農園として貸し付ける。
③ 「なんちゃって農業希望者」と農園利用契約をする。いわゆる体験農園場を運営する。数人〜数十人の農業体験希望者と契約することとなる。区割等の管理も地主がしなければならない。契約期間は1年が多くなりそうです。J Aに協力してもらう方法もあるようです。
④ 都市農園貸付として認定市民農園会社に一括貸しをする。駐車場や水道などインフラ整備に300万円くらいかかるかも知れません。契約期間は5年以内が予想されます。
⑤ 特定農地貸付として専業農家に農地として貸し付ける。
2.「特定生産緑地」の指定を受けない。この場合第2段階として2つの振る舞い方があります。
① 生産緑地指定解除のため、買取申出を市に対して行う。農地転用届出ができるようになります。税金の優遇措置は無くなりますが、営農義務もなくなり自由に管理処分ができます。現況が農地であれば5年かけて市街化区域農地課税へと増税されます。
② 放っておく。農地として続ける。この場合自動的に生産力指定の解除とはなりませんが、5年かけて固定資産税都市計画税が増税され、市街化区域農地課税となります。次世代からは相続税の優遇措置もありません。
どのようにすべきかお迷いの方もいらっしゃると思います。
一概に ”損” ”徳” という判断はできませんが、次の点については予め情報収集をしておくべきだと思います。
- 所有しておられる生産緑地の土地不動産としての客観的経済価値を知る。立地条件(周りの環境)、地型、傾斜、接道、面積などを総合的に考慮してみる。現時点の時価はどれくらいで、将来の見通しはどうであるか予測を立ててみる。
- 子や孫など家族の意見を聴いてみる。
- ご自分の価値観について今一度整理してみる。
私も昨年
「先祖代々から引き継いだ土地をどうするか?」
と言う問題に直面しました。当該土地は生産緑地ではありませんが、数年前に亡父から受け継いだ土地の一部です。家族や親戚の意見も聴きました。
行政書士、宅地建物取引士という立場だけでなく、皆様のお迷いの相談にのることができるかも知れません。