民事信託の登場人物は「委託者」「受託者」「受益者」の3人がメインです。他に信託関係人として「信託監督人」「受益者代理人」などがありますが、今回はメインの3人だけで考えます。
一般的に組成されることが多い民事信託のスキームは「自益信託」です。
自益信託とは「委託者」=「受益者」。
例えば、資産の所有者がお母さんだとして、委託者のお母さんが受益者でもあり、資産の管理等を受託者である息子さん等に任せる、というスキームです。スキームとは「体系化した仕組み」「枠組み」のことです。
これに対し「自己信託」とは、「委託者」=「受託者」。
例えば、お母さんが喫茶店を経営していたとします。
近所で人気の喫茶店で、経営は上手くいっています。お父さんには先立たれています。
60歳を迎えた現在預貯金も5,000万円近くできました。店の評判も良いのでお世話になっている信用金庫からの勧めもあって資金を借り入れて2店目を出店しました。両店舗とも順調に経営できています。
そんなお母さんには32歳になる一人娘がいますが、幼少期からの持病があります。治療は一生続き、定期的な検査も必要なので就職はせず、体調の良い時はお母さんのお店の手伝いをしています。
お母さんは、娘さんにできる限りの財産を残したいと考えていますが、自分もまだ若いため、老後の資金も必要です。現在はうまくいっている喫茶店も、将来の経営状況まではわかりません。
「自分も体調を崩してしまったり、不足の事態で、店の経営がうまく行かなくなったらどうしよう!?」
お母さん自身も元気なうちは店や財産を自分で管理したいと思っています。
将来の「不安」を解消する手立てはないでしょうか?
というときに有効利用できるのが、「自己信託」です。
ポイントとなるのは委託者のお母さんが自分で自分の財産を管理することです。
一見、意味がないように見えますが・・・
「お母さんの財産を、お母さん個人の財産と切り離して管理できる」
という点が最大のポイントです。
将来、喫茶店で何かのトラブルがあり経営状況が変化し、経営がうまくいかなくなったとします。
お母さんの預貯金などの財産を使って返済など経営の穴埋めをする必要があります。
このとき、一定額の預貯金等を信託財産としておけば、喫茶店経営が破綻したとしても信託財産が影響を受けることはありません。
「信託の倒産隔離機能」と呼ばれるものです。
お母さんは、例えば預貯金財産のうち2,000万円を娘さんを受益者とした信託財産とすることで、不確定な将来に対する「不安」を取り除くことができます。
この場合、委託者と受益者が異なるため「みなし贈与税」の問題があります。
対策としては「相続時生産課税」なども考えられます。
わかったような、わからないような話かもしれませんがこれからも何度も紹介してまいります。
我々は、皆様の不確定な将来に対する
「不安」を「安心」に変えられるよう努めます。
資産承継には「税金の問題」や「登記の問題」の問題も関わってきますので税理士さんや司法書士さんとチームを組んで問題に対処いたします。